リーリエ

リーリエは強くなった。

 

ナッシーアイランドで、突然の雨、

リーリエとミヅキは雨宿りをした。

災難でしたね、と言いながらハンカチで身体を拭くリーリエを、ドキドキしながら横目で盗み見る。

このまま、時が止まっていまえばいいのに、ふたりだけの、この時が。

ぼんやりと、そんなことを考えていた、そんなとき

 

「ミヅキさん!」

 

笑顔のリーリエが目の前にいた。

 

「晴れましたよ!」

 

一時の雨だったらしい、気づけば空は、清々しいほど晴れていた。

たっ、走り出すリーリエ。

待って、そんな言葉も出ないうちに。

彼女は虹の下で笑って、こちらに手を振って。

嗚呼、彼女を閉じ込めておくことは無理みたい、悲しいけれど、寂しいけれど。

でも、この気持ちは一時的なものではないのよ。

だからこそ、質が悪いのだけど。

のんちゃんに想いを寄せられる

「お姉ちゃん、いいなあ」なんて、そんなこと思いたくない。

スポーツだって勉強だって、やれることは全部、頑張ってきたんだ。

でも、でも・・・

「お姉ちゃん・・・

いいなあ、といいかけて、咄嗟に口を塞いだ。危ない危ない。

重症だ。

だって、あなたはお姉ちゃんと同じ学年、同じクラス、そしてあろうことか、隣の席!

ここまできたらもう、妬ましい。

・・・2年って年の差が、恨めしいよ・・・

でも、でも!そんなことで、こののん様は負けたりしないの!

チョーチョー頑張って、いつか、あなたから・・・

だから、だから!待っててよ、ね!

まいごのおしらせをします

リーリエがミズキとの待ち合わせ場所に、だいぶ遅れてやってきたときには、ミズキは情けない顔をしていた。

 

「リーリエ!!」

「み、ミズキさん、あの・・・」

 

遅れてごめんなさい、と言おうとした彼女に、走り寄り、抱き着くミズキ。

 

「リーリエ!リーリエ!!」

 

涙さえ、浮かべて。へたり込んでも、リーリエに縋りつき、離そうとしない。

 

「どこに・・・どこかに、いっちゃったのかと・・・」

 

涙声で話す、リーリエは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。こんなに心配してくれていたなんて。その反面、複雑な気持ちにもなるのだ。

リーリエの手を借り、立ち上がったミズキを、リーリエは優しく抱きしめる。

 

「ありがとう、ございます、ミズキさん」

 

それをミズキは、リーリエの存在を確かめるように、ぎゅ、と強く強く抱きしめ返すのだ。

 

どこにもいかないで、守ってあげるから、

なんて、言えないけれど。

 

この気持ちはなんなのか。

私の心が、迷子です。

あなた

「博士!・・・リーリエ・・・??」

ククイ博士の研究所を訪ねる。真っ暗だ、ポケモンがいるばかりで、誰もいない。

一応、リーリエの住居スペースとなっているロフトも階段をのぼり、覗いてみる。・・・いない。

はあ、溜息を吐き、そのままリーリエが使っているソファベッドに腰を下ろさせて貰う。

 

リーリエ。まだ、知らない。まだ。

知りたい。もっと、もっと。

これは、友達としてなのか。

「謎の多い少女」相手としてなのか。

わからないけれど、知りたいんだ、もっと、もっと。欲求は膨れ上がるばかりだ。

守って、あげたい。

 

ククイ博士。リーリエとはただの「博士と助手」の関係なのだろうか?

こんなことまで考えてしまう、自分が嫌だ。救えない。

だって、大人の男性だ。素肌に白衣だ。

・・・何かあったらどうしよう。気が気ではない。 気 が 気 で は な い 。

 

はあ。

疲れた。

横になる。

リーリエの匂い。

むしよけスプレーの匂い。

 

心優しい少女。

人見知りで、謎が多くて。守ってあげたくなる。

ねえ、わたしはいつか、あなたを知れるかな。満足のいくまで。

瞼がだんだん、落ちてくる。最後に思い浮かぶのは、あなた。

わたしはあなたのこと・・・

「ちゅっちゅっちゅー!ぺろり♪

 んー!美味しい!!」

「おいしいよねー、お花の蜜!」

「きゃああああ!!花壇のつつじが!!!貴方たち何をしているの!!?」

 

ローズのヒステリック気味な声。

まあ、そんな声が出てしまうのも当然といえば当然、だろう。

庭先に咲き誇っていた、つつじの花壇が虫に・・・だったらまだよかったのかもしれない、よりにもよって、おしとやかであるべき女の子たちによって全滅させられていたのだから。

しかも一方は・・・この家の住人のひとり・・・。

グリコ。ココ。

ふたりは何もわかっていない。自らの罪もわからず何故ローズが怒っているのかも

わからず、ふたりぽかんと顔を見合わせている。

ローズはもう、泣きたい。

 

「嗚呼・・・やってしまったのですね・・・」

「セイナ!」

 

苦笑気味に現れたセイナの顔には、ふたりの無邪気さに仕方がないなあ、と可愛い子供を甘やかせてしまうお姉さんの顔が出ていた。

しかってもらおうと期待してしまったのに、それも無理と判断したローズはがっくりと、肩を落とした。

 

「セイナは・・・どうしてここにやってきたんですの・・・」

 

疲れが隠せない。

そんなローズの様子にも苦笑しながら、ふふふ、とセイナは、「だって・・・」

 

「こんな甘くて美味しい蜜・・・昆虫さんでなくとも誘われてしまいます」

 

そしてひとつ、花を摘み取りちゅうう、と蜜を吸う。

これにはローズも「貴方もですか・・・」と更に脱力。

 

「ですけれど、ここの花壇がこれ以上ダメになってしまわないように、申し訳ないですけれど、グリコさんにはもう退場、していただきましょうね」

 

これ以上グリコにここいられたら、花壇は花壇でなくなってしまうだろう。

セイナはふふ、と笑顔でそう提案した。

 

「えー?」

「もっとグリコちゃんといてたいよー!」

「ココ!」

「ひゃあ!」

 

口をとがらせ抗議するココには、ローズがぴしゃり!

花の蜜に誘われてやってきたグリコは、帰っていくことになった。

 

「あ、でも~」

「?」

 

「最後に・・・ぺろり♪」

ちゅっ

 

一瞬・・・というかしばらく皆は動けなかった。その隙にグリコは3人に背を向けて「ごちそ~さま♪」と言って去っていく。

後に残るは後に残るは・・・どんどんどんどん赤い顔になっていくセイナだった。

 

「グリコさん!金・輪・際!この花壇への入室を禁じます!!!!」

 

彼女らしくもなく大きな声で。

でもその声は、届主には届かないんだなー!

 

ティアの罪

(嗚呼・・・)

落ちる

(貴方も・・・「あい」を・・・選ぶんですね・・・)

落ちていく

 暗く深く、冷たい水底へと、落ちて・・・

 

「あい、には、サニーにはなれない」

「でも、私は私らしく」

私、ステップを踏んでいたのにいつの間に踏み外してしまったみたい

ぐらり、身体が傾いて、落っこちて

真っ逆さま

愛して、ほしかった

いちばん、いちばんに

あのこそのこ、誰よりも

いちばんに

涙がこぼれる

ぬぐう手もない

いつの間に体は芯から冷えて

必死に手を伸ばしても、光さえ掴めなくなっしまうよ

嗚呼・・・私・・・終わっちゃうの・・・?

 

手を―――

手を伸ばしてーーー

 

ゆらゆら、水底から見えたものはーー人魚?

 

はっしと私の手を掴んだその手が温かかったことを覚えている。

人魚は泣いていた、大粒の涙をこぼして。

「――どうして――

 貴方が泣いているんです、ティアさん?」

「自分でもわからないよ・・・

 セイナのばかばか」

ぐす、ぐすん、尚も泣き続けて大粒の涙がきらり、光る。

嗚呼、そんなに泣いたら――跡が残ってしまう。

「ティアさん、もう泣かないで、ね?」

必死になだめすかすも、人魚の涙は止まらない。

貴方が泣くことなんてないのにーー泣いてほしくなんてないのになーー

人魚は私のために泣いているのではないのだけれど

そう、錯覚してしまう

そう、思いたくなる

 

ねえ、貴方の罪は何ですか

私の罪はね、可愛い人魚を泣かせてしまったこと

これ、極刑

始動!

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セイナちゃんメインで進めていく予定です。
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