「ちゅっちゅっちゅー!ぺろり♪

 んー!美味しい!!」

「おいしいよねー、お花の蜜!」

「きゃああああ!!花壇のつつじが!!!貴方たち何をしているの!!?」

 

ローズのヒステリック気味な声。

まあ、そんな声が出てしまうのも当然といえば当然、だろう。

庭先に咲き誇っていた、つつじの花壇が虫に・・・だったらまだよかったのかもしれない、よりにもよって、おしとやかであるべき女の子たちによって全滅させられていたのだから。

しかも一方は・・・この家の住人のひとり・・・。

グリコ。ココ。

ふたりは何もわかっていない。自らの罪もわからず何故ローズが怒っているのかも

わからず、ふたりぽかんと顔を見合わせている。

ローズはもう、泣きたい。

 

「嗚呼・・・やってしまったのですね・・・」

「セイナ!」

 

苦笑気味に現れたセイナの顔には、ふたりの無邪気さに仕方がないなあ、と可愛い子供を甘やかせてしまうお姉さんの顔が出ていた。

しかってもらおうと期待してしまったのに、それも無理と判断したローズはがっくりと、肩を落とした。

 

「セイナは・・・どうしてここにやってきたんですの・・・」

 

疲れが隠せない。

そんなローズの様子にも苦笑しながら、ふふふ、とセイナは、「だって・・・」

 

「こんな甘くて美味しい蜜・・・昆虫さんでなくとも誘われてしまいます」

 

そしてひとつ、花を摘み取りちゅうう、と蜜を吸う。

これにはローズも「貴方もですか・・・」と更に脱力。

 

「ですけれど、ここの花壇がこれ以上ダメになってしまわないように、申し訳ないですけれど、グリコさんにはもう退場、していただきましょうね」

 

これ以上グリコにここいられたら、花壇は花壇でなくなってしまうだろう。

セイナはふふ、と笑顔でそう提案した。

 

「えー?」

「もっとグリコちゃんといてたいよー!」

「ココ!」

「ひゃあ!」

 

口をとがらせ抗議するココには、ローズがぴしゃり!

花の蜜に誘われてやってきたグリコは、帰っていくことになった。

 

「あ、でも~」

「?」

 

「最後に・・・ぺろり♪」

ちゅっ

 

一瞬・・・というかしばらく皆は動けなかった。その隙にグリコは3人に背を向けて「ごちそ~さま♪」と言って去っていく。

後に残るは後に残るは・・・どんどんどんどん赤い顔になっていくセイナだった。

 

「グリコさん!金・輪・際!この花壇への入室を禁じます!!!!」

 

彼女らしくもなく大きな声で。

でもその声は、届主には届かないんだなー!